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囲い込みとセットで悪者扱いされる両手仲介。
まず、結論から申し上げますと「両手仲介」は不動産仲介の取引を受けられるお客様(売主・買主)にとって決して悪い取引方法ではありません。
なぜこんなお話をするかといえば、たまに勘違いされているお客様をお見掛けすることがあるからです。
悪いと勘違いされている点
①民法における「双方代理の禁止」に抵触しているから
②手数料が倍額になるから
③片手仲介の方が両手仲介よりも取引の公正が保てるから
では、一つずつご説明していきましょう。
①の「双方代理の禁止」に抵触しているから
まず「1万円でも高く売りたい」とする売主と、「1万円でも安く買いたい」とする買主とは、お互いが相反する関係にあることはおわかりかと思います。
両手仲介の場合、その相反関係にある2者の間に入り、利害を一致させるよう働きかけるわけですから、例えるなら裁判において原告と被告に同じ弁護士がつくことや、検事と弁護士が同じ人物1人で裁判がおこなわれるようなものなのかもしれません。
そして、民法では双方代理は禁止されております(民法第108条より)。
しかし、不動産仲介は法律上「委任」ではなく「準委任」に当たるため双方代理の原則には抵触しないというのが現状での答えになります。
仲介(媒介)行為は代理行為ではなく、売主や買主の仲介人であって代理人には当たらないということです。
余談になりますが「仲介」という行為自体、上で述べた検事と弁護士のように相反する相手と「争う」という関係性とは大きく異なります。
例えば、片手仲介で取引を行う場合、売主・買主双方に不動産会社の担当者が付きます。その2人は同じ目的(同一する不動産の売買を履行すること)を有しており、お互いが売主・買主の意見を調整しながら着地点をみつけて履行します。当たり前ですが、不動産仲介は戦いや争いという性質の話とは違い、売買における商談なのですから。
②手数料が倍額になるから
1つの取引で売主・買主双方から手数料を受領することができる両手仲介。
(詳しくは「Q:両手仲介・片手仲介とは」をご参照ください)
たしかに同じ取引で片手仲介の倍額をもらうのでどことなく「儲かる=悪い」的な印象を与えているのかもしれませんが、実際そうではありません。
「Q:不動産仲介とは」でもお話ししましたが、売主側の不動産会社が行う作業は、物件調査、購入希望者の検索(販売業務)、契約書に必要な書類の作成および契約業務、決済(引き渡し)業務の履行など多岐に渡ります。
また、買主側の作業も、現地案内、資金計画、購入条件の調整や折衝、契約の立ち合い、その他契約の履行に必要な調整・手配・手続き、融資の事前審査手続き・申し込み、決済(引き渡し)業務の履行など同じく多岐に渡ります。
両手仲介ではその両方の作業を同時に行うわけですから、不動産会社が楽をして倍額を儲けているわけではなく、取引全体からみても業務上正当な対価と言えます。
③片手仲介の方が両手仲介よりも取引の公正が保てるから
片手仲介の場合、双方に別の不動産会社が介入するため、一見取引の公正が保たれそうですが、実際はそうとも言えません。
片手仲介(共同仲介)では、売主・買主双方の不動産会社の担当者で取引を進めていくわけですが、物件をスムーズに決済するという着地点を常に見つめながら、お互いの意見を詰めていきます。当たり前ですが、売主と買主を常に平等に保てるわけはなく、ケースバイケースでそのバランス(売主買主双方の譲歩の配分)は変わるのが現実です。
そうでなければ、大半の取引は不成立に終わってしまいます。
両手仲介の場合は、同じ担当者でその意見の調整をすすめるわけですが、1人でやるか2人でやるかの違いだけであり、結果着地点にそう大きな相違は生まれません。
そこからもわかるように、二つの取引に公正の差は生じえません。
ここまでお話しした通り、不動産取引にあたり両手仲介がよくない取引ということはまったくなく、正当な取引方法ということがお分かりいただけると思います。
続きは、「両手仲介のメリット、デメリット」をご覧ください。